論理的思考を獲得するためのセットリスト-決定版-

何をするにもとりあえず必要なのが論理。「人は論理じゃ動かねぇってカーネギー先生も言ってただろ!」と言われようとも、だからって身につけない言い訳にはならないのが論理。感情的な意思決定はときに合理的意思決定を凌駕するかもしれないが、その情動・情熱がいかに論理で説明のつかないものなのか、その距離感を分かっている者こそが感情を制する!

てことで、よくオススメ本とか聞かれるので以下にまとめておきます。

原論

ぼくたちは主張をするとき、それを裏付けるため、大きく分けて「言葉」か「数字」を用いる。論理的思考とは、それらをハンドリングする技術体系のことだ。

その中でも主たるものは、「因数分解」と「関数」に関連する技術。そう、数学。とはいえ、数学が苦手な人も安心して読み進めて欲しい。この先に「平方完成」や「解の公式」が出てくることはない。使うのは、数学の「考え方」だ。それを使って、入試問題ではなく、実社会で直面する問題を問いてみようというお話。

では早速。

例えば、会議で「この前のイベントでは人為的ミスが目立ったね」という反省点が出たとする。こういった時、たいていの場合は「一人一人が意識を高く持っていこう」などとという結論に終始しがちだが、これは思考停止の典型だ。

ここで

「意識というより単純に『疲労度合いの高低』が『ミスの量』を規定しているんじゃない?」(関数の視点)とか、「そうだね。あと疲労にも『精神的』なものと『肉体的』なものがあるよね」(因数分解の視点)

といった発想を生み出してくれるのが論理的思考である。こうすることで、「肉体的負担を軽減するために人員シフトを組み直そう」とか、「精神的な負担を軽減するためにチーム制で責任を分散しよう」とか、身のある打ち手が出てくるようになる。

どう?簡単でしょ。

「論理」を「発想」や「創造」といった概念の対極に位置づける人も多いが、そうではない。論理的に思考できるから発想が可能になるし、具体的なアイデアが生まれる。

習得プロセス

1.思考原理・方法論の習得
2.思考高速化テクニックの習得
3.血肉化(ケーススタディ)

習得のプロセスは大きくわけてこの三段階に分かれる。3は書籍を読むだけで習得できるモノでもないので、ひとまず本編では1,2について書くことにする。通り一遍のロジカルシンキング本紹介なら過去に腐るほどあるけども、それらとは少し違ったラインナップになっているはずだ。基本的には新書と文庫だけで下記「(必読)」と付記してある3冊を読み、日々その思考原理・方法論を意識してさえいれば問題なっしんぐ。

1.思考原理の習得(必読)

巷で流行のビジネス書は「ロジックツリー」や「MECE」をはじめ、魅力的なフレームワークを分かりやすく紹介してくれてはいるものの、思考の原理・原則を養ってくれるような良書にはなかなか出会えない。これらのフレームワークはどちらかというと「2.思考高速化テクニックの習得」の段階で覚えるもので、まずは骨太な思考原理を養わなくてはいけない。

そんなときに馬鹿にできないのが、ビジネス畑ではなくアカデミック畑の思考ガイド本だ。「大学の勉強なんて役に立たない」と思われがちだが、少なくとも(実証分野を中心とした社会科学も含む)科学的な考え方は論理的思考の原理・原則を習得する上で大変有用だ。

創造の方法学 (講談社現代新書)

創造の方法学 (講談社現代新書)

推計学のすすめ―決定と計画の科学 (ブルーバックス)

推計学のすすめ―決定と計画の科学 (ブルーバックス)

この二冊はいずれも新書で1000円を切る価格で買えるが、10000円払っても良いくらいのリターンがある。とにかくビジネス書・実用書を読む前にこれらを読んで欲しい。

「創造の方法学」で語られる「因果関係とは」「仮説とは」「問題とは」「理論とは」「概念とは」・・・といった定義は暗記しても良いくらい。もちろんそれらの定義説明は前半2,3割程度で、以降はがっつりと原因を追求するための科学的方法論が説かれている。

また、上記をロジカルシンキングと言うならば、「推計学のすすめ」はクリティカルシンキングに近い。統計学の基本知識・技能を身につけながら、それを使ってデータを疑う方法論が説かれている。こちらはケーススタディが豊富なのも嬉しい。ただ、ガチで数学ができない(「"Σ"ってなんて読むの?」みたいな)人にはちょっとむずかしい。

※追記

原因を推論する -- 政治分析方法論のすゝめ

原因を推論する -- 政治分析方法論のすゝめ

2013年11月に発売された「原因を推論する」も素晴らしい。上で紹介した「創造の方法学」の現代版と言って良い。説明に「政治分析の方法を身につける」とある点、また表紙がどうにも硬派で近寄りがたい点などから敬遠する人も多いと思うが、待たれよ。確かに扱う事例は政治現象が多いが、どれも極めて身近なものである。また、中身に関してはむしろ「創造の方法学」よりも分かりやすい。筆致も極めて軽妙洒脱。超オススメ。

思考の高速化(必読)

ここは思考テクニックやフレームワークを覚えるフェーズ。前の段階で「原則」は学んでいるはずなので、残りは文庫本レベルの分量でコンパクトに抑えられるにこしたことはない。

何より安い。そして読みやすい。巷で人気の「考える技術・書く技術」「ロジカルシンキング」「ロジカルプレゼンテーション」辺りも良書であることに違いないが、原則はもう押さえているのだから安くて読みやすい方がベター。本書は安っぽい表紙・タイトルとは裏腹に中身はかなりしっかりしている。分厚い本で挫折したというあなたも是非一読を。

おまけ

必読書を読んだ上で、思考の原理・方法論に興味を持った人は副読本としてこの辺りを攻めてみても面白い。

考えることの科学―推論の認知心理学への招待 (中公新書)

考えることの科学―推論の認知心理学への招待 (中公新書)

「科学哲学の冒険」は特にオススメだ。「サイエンスの目的と方法を探る」という副題通り、科学の方法論が進化していく歴史を概観しながら、正しい方法論をめぐる歴史上の論争が鮮やかに語り起こされている。世界では、各々が論理的に正しい主張をしていてもなお、これまで対立が絶えることはなかった。「何が正しいのか」なんて分からない。そんな中、どうもがいていくかのヒントが眠っている。

「考えることの科学」は推論の方法について、大きく「論理学」に依拠した方法と「確率・統計」に依拠した方法について、それらの科学的思考と直感的推論とのギャップについてうまくまとめられている。これまで学んできた論理的思考というのは、今言ったところの科学的思考だ。しかし、そこから導き出される結論が直感的に正しくないと思うことがきっとあるだろう。この本は、そんな時に人の直感を歪めているものの正体を探るための大きなヒントになる。

ここまで読むと、また改めて最初に読んだ「創造の方法学」と「推計学のすすめ」の有り難みも一段と増してくるはずだ。

さぁ、骨太に思考していこう。